今回の書道専門店エピソードストーリー(第6話)は、かなの古典である針切の臨書におすすめの筆をご紹介します。
これから針切を臨書しようと思っている方、
現在針切を練習中の方、
どんな筆を使ったらよいかとお悩みではないですか?
針切の特徴:
名前の如く細い筆線が特徴で、美しく流動的です。
他の古筆と比べても文字のサイズが小さく、
登場する道具:
小筆 黒軸面相 一休園製
書道短編小説 針切に使う小筆篇
かなの古典・針切の臨書におすすめの小筆をご紹介する
書道専門店の大阪教材社の営業時間は、朝9時から夕方の17時。
もうそろそろシャッターを下ろそうかという閉店前、もう外は薄暗くなってきている。
今日は月末棚卸で、1人で黙々と筆の数を数えていたとき、
「まだ営業してますか?」
近所にお住まいの常連客である太田さんが、入口の扉を少し開けて、申し訳なさげに頭だけ覗かせて尋ねた。
「大丈夫ですよ、どうぞお入りください。」
そう言うと、私は筆棚に陳列されている筆の在庫数を数える手を止めて、右手で店内に促すように案内する。
「あっ、数えてた筆、何本やったか忘れた。」
ふいに浮かんだ心の声が外に漏れないように、おもわず咳払いした。
「来週の書道教室で針切を練習するのに使う筆を探してて、、」
最近、太田さんは、針切の臨書をはじめたのだ。
針切の特徴
針切とは、その名にある通り、針のように細く鋭い線が特徴の仮名書道の古典のお手本。
美しく流動的な自由さがあり、書道を親しむ人にとって、もっとも好まれる仮名の1つだ。
針切を練習するというのは、針切という古筆(昔の人の美しい筆跡)を書道の練習のお手本として練習(臨書)するということ。
針切に適した小筆
「それなら、面相筆はいかがでしょう?」
そう言って、筆棚の中から最も穂先が細い黒軸の筆を手渡した。
熊野筆メーカーである一休園製の黒軸面相だ。
面相筆とは、元々日本画で人物や仏像の顔を描くために作られた筆で、細い線を描くのに最も適している。
穂にはほとんど厚みがなく、画像のようにホッソリとしている。
楷書の点画で、起筆・収筆などをはっきりさせるものには不向きだが、細い線を書くには最適なのだ。
面相筆を書道の筆として使う場合は、太さをあまり要求されない古典のかなに使うのがオススメ。
「面相筆の毛質は、イタチ毛で腰が強く、弾力があるので、強い線というよりは、柔らかな線を書くことが出来ます。
リズム感のある小さな字を書くのに最適ですよ。」
「それなら針切で使うのに良さそうやね。」
「そうなんですよ。」
「この筆はどうやっておろしたらいいの?」
「おろし方は、少なくとも穂先1/3以上はおろしてくださいね。全部おろしていただいても大丈夫です。まとまりがよく、墨継ぎも気にせず連綿を書き続けることが出来ます。」
「あぁ、私いつも筆の先しかおろしてなかったわ。この筆は半分くらいはおろしてみようかな。」
そう言いながら、筆先を凝視する太田さん。
「まだまだ勉強不足なんやけど、書道で面相筆を使うときってどうやって書いたらいいの?」
「使い方はですね、直筆にして真上から圧をかけながら使うんです。
面相筆の特徴である反発力を活かしながら書きます。筆を速く運ぶと線が弱くなるので、注意が必要です。」
「じゃ、これもらおうかな。お会計してもらえる?」
レジカウンターで、筆を専用の袋に入れる。
移動中にキャップが外れて筆を痛めるのを防ぐために、筆を購入いただくときは、必ずこの紙袋に入れるのだ。
お会計は880円、1000円でお釣りをお渡しすると、
「これで今晩から練習出来るわ。閉店時間やのにごめんね!」
5時20分をさす店内の時計を横目に、足早で店を出ていかれた。
シャッターを閉めて、筆の棚卸に戻ろうかと思った5秒後、再びお店の扉が開く。
入口を見ると、そこには先程の太田さんが立っている。
「何回もごめん、ついでに料紙も買って帰るわ!」
思わず2人で顔を見合わせて笑う。
「どうぞ、時間気にせずにゆっくり選んでくださいね。」
書道ショートストーリー 第1回目 プロローグ
書道ショートストーリー 第2回目 羊毛の穂先短い書道筆
書道ショートストーリー 第3回目 おすすめの筆ペン
書道ショートストーリー 第4回目 淡墨の作り方
書道ショートストーリー 第5回目 落款印(雅号印)をオーダーする
書道ショートストーリー 第6回目 針切の臨書に適した小筆
書道ショートストーリー 第7回目 細光鋒の長い羊毛書道筆
書道ショートストーリー 第8回目 かな条幅の書道筆
書道ショートストーリー 第9回目 仮巻表装を依頼する
書道ショートストーリー 第10回目 額装された書道作品
書道ショートストーリー 第11回目 書道筆の洗い方
書道ショートストーリー 第12回目 半紙等の保存方法
書道ショートストーリー 第13回目 書道料紙を選ぶポイント
書道ショートストーリー 第14回目 色紙を書道用に使う
書道ショートストーリー 第15回目 竹筆の使い方 書道特殊筆
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