書道専門店のエピソードストーリー、今回は第10回目です。
今回は書道作品を額装希望でこられたお客様のエピソード。
額装を希望されるお客様の想いと私たちがどのような額装を提案したのか。
登場する額装:
女桑角型額装 フリータイプ 写経
書道短編小説 額装篇
亡き妻の書道作品を額装する
「実は最近、妻がなくなりましてね。」
モスグリーンのローバーミニでお店まで来てくださった古田さんは
その茶封筒は、上下2箇所の留め具に紐をグルグル巻いて留められ
頑丈に保管されているのをみると、
茶封筒から出てきたその紙は、
「遺品を整理していたら、
これを額装してもらうことは出来ますか?」
比較的最近に書かれたであろうその般若心経は、やや生成り色の楮紙。
罫線は、微妙に手ぶれしたような味わいのある線が引かれており、
ご自分で線を引いて、紙も自らカットされたのだろう。
かなり手間をかけて書き上げた般若心経のように見える。
「出来れば常に見える場所に、これを飾っておきたいんです。」
哀しみをたたえた優しい目で私を一瞥すると、その紙をそっと手渡した。
今のご主人にとって、この般若心経は、
額装は、奥様を連想出来るような仕立てにしよう、そのとき思った。
どのような額装にするか
「マットの色のご希望はございますか?」
「どうやって選んだらいいのか分からなくて。」
と言って、ご主人は自分の手元に目を落とした。
「大丈夫ですよ。一緒に選んでいきましょう。額装を飾る壁は、
通常、額装する際は、
「白色の珪藻土です。」
見た目の印象や会話の内容から、
「奥様は何色がお好きでしたか?
例えば、よく着る服の色とか。」
普段はあまり聞かない質問だが、
「服装は、白色や薄い茶色が多かったですが。」
「なるほど。
マットは白色で、
そう言ってイメージが掲載されたファイルをお見せする。
ご主人は、決断するのに多少困惑の表情を浮かべたものの、
額装や軸装をしたことがない方は、
書道用額装の3タイプの形
書道額縁には、大きく分けて3種類の型がある。
最も一般的でマットに直接作品を貼るフリータイプ。
浮かし下駄という台を作品裏の中心につけることで、
作品が額縁の中に沈んだ型の落とし型。
今回の場合は、奥様の作品をシンプルでありながら、
額装の詳細を決める
白色のマットに生成り色の作品。
白色に薄い茶色の服装を好んで着ておられた奥様の面影を追いつつ
フクリンとは、
薄いグレーの副林を作品の四辺に配置することで、
ナチュラル系の服装を好んで着ておられた奥様は、
額装、その仕上がりは
10日後、額装が仕上がった。
通常、2週間は時間をいただいているが、1日でも早くご主人の手
繁忙期から外れていたことも、早く仕上げる上で都合がよかった。
ご主人に連絡すると、その日のうちに取りに来てくださった。
口には出されなかったが、1日でも早くと待っておられたのだろう
額装を覆っているダンボールの上下箱を両手でそっと開けると、
薄いグレーのフクリンが書道作品を程よく引き立てている。
珪藻土の白い壁にもマッチする額装に仕上がった。
しばらく無言で作品を見つめて二度、三度と深くうなずいてから、
「ここに妻がいるようです。
それほど口数の多いご主人ではないけれど、
額装の中で、手書きの般若心経からは、奥様の息づかいを感じる。
死ぬということは、
出来上がった額装作品をご主人と眺めながら、
人気の額装サイズ:
女桑角型額装 フリータイプ 半切
女桑角型額装 フリータイプ 全紙
書道ショートストーリー 第1回目 プロローグ
書道ショートストーリー 第2回目 羊毛の穂先短い書道筆
書道ショートストーリー 第3回目 おすすめの筆ペン
書道ショートストーリー 第4回目 淡墨の作り方
書道ショートストーリー 第5回目 落款印(雅号印)をオーダーする
書道ショートストーリー 第6回目 針切の臨書に適した小筆
書道ショートストーリー 第7回目 細光鋒の長い羊毛書道筆
書道ショートストーリー 第8回目 かな条幅の書道筆
書道ショートストーリー 第9回目 仮巻表装を依頼する
書道ショートストーリー 第10回目 額装された書道作品
書道ショートストーリー 第11回目 書道筆の洗い方
書道ショートストーリー 第12回目 半紙等の保存方法
書道ショートストーリー 第13回目 書道料紙を選ぶポイント
書道ショートストーリー 第14回目 色紙を書道用に使う
書道ショートストーリー 第15回目 竹筆の使い方 書道特殊筆
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