第15回目の書道専門店のエピソードストーリーは、竹筆(特殊筆)です。
定番の書道筆ではないので、敬遠している方もおられると思います。
竹筆は、一般的な書道筆と比べてどんな違いがあるのか?
どのような使い方をするのか?
書道屋店主とお客さんの会話から、竹筆の特徴などを案内させていただきます。
書道短編小説 竹筆篇
竹筆 特殊な書道筆
2月に入って最初の土曜日の朝だった。
開店するなり、50代くらいのスーツ姿の男性が現れた。
見慣れないお客さんだ。
大阪教材社の店舗は、
土曜日は、午前中だけお店を開けるようにしている。
平日お立ち寄りいただけないお客さんがお越しになるからだ。
「これはどうやって使う筆ですか?」
そのお客さんが手にしているのは、筆棚の隅に陳列されていた筆。
書道に使用する特殊筆、竹筆だ。
竹筆(特殊筆)の特徴
「あっ、これは竹筆と言って、竹で作った筆なんです。穂に触るとすごく硬いでしょ?」
竹筆の大きさは、一般的な筆と変わらない。
小枝のようなその竹の筆は、
極めて原始的な作りの書道筆だ。
もし筆に獣毛を使用されていなければ、書道に使う筆は、
「こんなトゲトゲした硬い筆で書けるんですか?」
見た目からして、ごもっともなご質問だと思いながら、
「それが墨をつければそれなりに書けるんですよ。
硬さがあるから、筆触も安定します。
柔らかくないので、自由な線は書きにくいですが、
興味深げに筆先を指でチョンチョン触りながら、
「この筆先なら、確かに豪快な線になりそうですね!
竹筆は使ったことがないんですが、
竹筆(特殊筆)で得られる線
「直筆で書くと、線の太さが出にくいですが、
それとは逆に側筆で書くと、柔らかさがでますが、
竹筆(特殊筆)使い方の注意点
「あと、硬すぎて書けないと感じる場合は、
ただ先程も申しましたように、
「なるほど。じゃ、少しずつ塩水につけながら、
よし、試しに竹筆1本いただけますか?
ちょうど作品制作のネタを探していたんですわ。」
満面の笑顔でそう言うと、
「ありがとうございます。頑張ってくださいね。もし出来たら作品拝見したいです。」
私がそう言うと、照れくさそうに頷いて、
「来週また来るんで見てください。じゃあ!」
見世の入口付近で話していたので、その流れで見世の前の駐車場まで一緒に出ていった。
再び軽く挨拶を済ませると、お客さんは鏡面のように手入れされた黒色のBMWに乗り込んだ。
目の前の信号が青色になると、左折して走り去るピカピカの車を見えなくなるまで見送った。
そういえば見世の黒色の軽自動車は、ここ数か月洗車した記憶がない。
ピカピカの車を見送りながら、午後からの時間は、営業車をピカピカにすることに費やそうと決めた。
竹筆のまとめ
- 豪快な線を書くことが出来る(自由な線は書きにくい)
- 直筆で書くと、線の太さは出にくいが、
竹筆の硬質な線が出やすい - 側筆で書くと、柔らかさがでるが、
竹筆の特徴的な硬い線が出にくい - 硬くて書けないと感じた場合、一晩塩水につけておくとよい。竹がほぐれて、墨含みもよくなる。
特殊筆は、竹筆以外にも多種存在します。
孔雀、マングース、木などなど。
日本で特殊筆をつくる職人はほとんどいなくなってしまいましたが
たまにはこのような特殊筆を使ってみるのも、
今回は、特殊筆の竹筆をご紹介しました。
書道ショートストーリー 第1回目 プロローグ
書道ショートストーリー 第2回目 羊毛の穂先短い書道筆
書道ショートストーリー 第3回目 おすすめの筆ペン
書道ショートストーリー 第4回目 淡墨の作り方
書道ショートストーリー 第5回目 落款印(雅号印)をオーダーする
書道ショートストーリー 第6回目 針切の臨書に適した小筆
書道ショートストーリー 第7回目 細光鋒の長い羊毛書道筆
書道ショートストーリー 第8回目 かな条幅の書道筆
書道ショートストーリー 第9回目 仮巻表装を依頼する
書道ショートストーリー 第10回目 額装された書道作品
書道ショートストーリー 第11回目 書道筆の洗い方
書道ショートストーリー 第12回目 半紙等の保存方法
書道ショートストーリー 第13回目 書道料紙を選ぶポイント
書道ショートストーリー 第14回目 色紙を書道用に使う
書道ショートストーリー 第15回目 竹筆の使い方 書道特殊筆
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