第16回目の書道専門店のエピソードストーリーは、鶏毛筆です。
鶏毛筆とは、どのような筆なのでしょうか?
今回は、鶏毛筆の特徴について、スタッフとお客さんのやりとりの中で解説させていただきます。
書道短編小説 鶏毛筆篇
鶏毛筆という特殊筆
そう見間違えるようなフワフワとした美しい穂先の筆が、
それは、鶏毛筆という名前の筆だ。
「鶏毛筆」を耳にしたり、見たりすると、見世で起こったある出来事を思い出す。
私には、過去に鶏毛筆に関して苦い経験がある。
鶏毛筆にまつわる失敗
書道の専門店でお仕事をするようになって、
春の晴れた日に、中高年の女性が来店され、
月に何度か見世に書道具を買いにこられる田中さんだ。
田中さんは、来店されるなり、筆コーナーに直行し、
「ありがとうございます、鶏毛筆をお探しだったんですか。」
あまり一般的ではない鶏毛筆を目的買いするお客さんは珍しい。
「そうなのよ。書道作品の制作用に筆が欲しくてね。早速今日から使ってみようと思っています。」
そのときは、それ以上詮索せずにお会計をし、
いつものように軽く世間話しをしてから帰られた。
しかし、その翌日、
「この筆、毛がフニャフニャで全然書けないよ。」
その田中さんが驚いたように話す様子を見て、はじめて状況を理解することが出来た。
田中さんは、一般的な書道筆と間違えて、鶏毛筆を買いに来られたのだ。
後に分かったことだが、田中さんは
これは明らかに私のミスだった。
田中さんが迷いなく鶏毛筆を選んだ時点で、
結果的に書道専門店として行うべき内容の確認と商品説明を怠った。
この経験は、深い反省材料になり、後に筆を販売する上で、
思い込みは厳禁だ。
この筆のお代は、返金させていただくことにした。
そして、改めて用途に合った筆をご提案し、
代わりに購入されたのは、馬毛と羊毛ヒゲの兼毫筆。
誤って鶏毛筆を販売してしまった田中さん、
田中さんが「この筆、全然書けない」と言われたように、
鶏毛筆の特徴
鶏毛筆は、穂の弾力がほぼ無く、
冒頭でも書いたように、タンポポの綿毛のような穂先。
白い毛がボール状になって、筆管に乗っているようだ。
他に例えをあげるならば、綿あめのような、
吹けば飛んでいってしまいそうな見た目をしている。
筆の棚に陳列しているときは、
では、なぜこのような筆が誕生したのだろうか。
それは使ってみればよく分かるけれど、「
鶏毛筆を選ぶメリット
書道に使う筆ならば、通常自分が扱いやすい筆を選ぶ。
でも、鶏毛筆は「思い通りに書けない」
鶏毛筆は、独特の偶然性、
少し慣れてきたら、筆圧を変えたり、運筆の速さを変えてみる。
そうすると、
鶏毛筆を多少でも扱いやすくするには?
どうしてもうまく使えないと感じる場合は、
鶏毛筆は、
少し荒い運筆で面白い線を狙うのに適しているのだ。
鳥類の羽根の筆は、他にも孔雀やガチョウ、
残念なことに、専門の職人が少なくなり、
鶏毛筆の特徴まとめ
- 独特の偶然性、
意外性に満ちた面白い線を書くことが出来る - 筆圧を変えたり、運筆の速さを変えてみると、
鶏毛筆独特のバラけたような面白い線が書ける - どうしても書きにくい場合、墨量を減らして書いてみる
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