第15回目の書道専門店のエピソードストーリーは、山馬筆です。
山馬筆とは、どのような筆なのでしょうか?
今回は、山馬筆の特徴や書法について、スタッフとお客さんのやりとりの中で解説させていただきます。
書道短編小説 山馬筆篇
山馬筆をすすめる
分厚い雨雲のせいで、いつもよりあたりは薄暗い。
憂鬱な気持ちにさせる天気を視界の端に感じながら、
いつもなら見世の前に出すはずの看板や商品の台座は、
雨降りのために、見世全体がなんだか狭苦しい。
見世のドアに引っ掛けてある準備中と書かれた札を、
この時間帯に開くことのない見世のドアが開いた。
スーツ姿の男性が、ドアの側に立っている。
常連のお客さんである深山さんだ。
開いたドアの外から、雨の匂いが少し漂ってきた。
「開店前にごめんやで。
なかなか立ち寄る時間が無くて、
今日の天気とは対照的な明るい声が、見世の中を包み込んだ。
「どうぞ、どうぞ。何かお探しですか?」
問い合わせメールの返信をしていたパソコンのキーボードから手を
「今、古典の臨書してるんやけど、俺が使ったことが無い筆で、
「まだ買われていない筆で、おすすめするなら。」
左斜め上に目線をやりながら少し考えて、
「山馬筆は、使われたことありましたっけ?」
「サンバ?カーニバルくらいしか知らんわ。」
そう言って、ガハハと豪快に笑う。
深山さんは、いつもお元気だけれど、今日も朝から快調のようだ。
山馬筆の特徴
「山馬は、東南アジアやインドに生息する鹿の一種なんですよ。
山馬の毛は、硬い毛が特徴で、古典の臨書に向いています。
楷書、行書、草書の三体にも対応します。」
「ほんまや。えらい毛の硬い筆やね。
どうやって書いたらええんかな?」
山馬筆をお渡しすると、
筆に備わる毛の本数は少ないけれど、1本1本の毛が太くて硬いの
外側の毛が開き、まとまりがない。
これが、書いた時、線のガサつきとなってあらわれる。
ガサつきを抑えたい場合には、少し墨量を増やせば、
山馬筆の書法
「この筆は、穂自体が硬いので、直筆のままで書くと、
側筆にして、硬い穂がしなる強い弾力を確認しながら、
なかなか強い反発力ですが、
山馬筆の値段
山馬の毛は、
価格も昔に比べて高くなってきている。
「この山馬筆が、古典の臨書に向いている理由って何かあるの?」
山馬筆に少し興味を持っていただけたようだ。
山馬筆を古典の臨書に使うと
「普段は、羊毛筆を使われていますよね?
山馬筆は、
書く人の実力がハッキリでる筆なので、
剛直な線をうみだす山馬筆は、
「なるほどね。はじめは書きにくいかもしれないけど、
天気に影響されて、朝から少し鬱々とした気分だったけれど、
雨の日に太陽のように明るい深山さんが来てくれたおかげだ。
山馬筆を手にした深山さんをお見送りしようと、
再び雨の匂いとともに湿気を感じたけれど、
楷書、行書、草書の古典臨書をお考えの方には、
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