中務集を臨書する前に特徴を知る

書道
投稿日:2020年3月27日
中務集

中務集を臨書する前に特徴を知る

西行が書いた中務集とは、どのような特徴がある古筆なのでしょうか?
以下で解説させていただきます。

  1. 中務集の筆者は?
  2. 中務集の特徴は?
  3. 中務集の臨書にオススメの臨書用紙・料紙・筆

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中務集の筆者は?

「ねがわくば花の下にて春死なんそのきさらぎのもち月のころ」の歌で知られる歌人・西行(1118~1190年)。
西行は、本名を佐藤義清といい、武家に生まれて鳥羽上皇に仕えたものの、保延6年(1140年)に23歳の若さで出家し、西行・円位などと号しました。

西行は、仏道修行を重ねるとともに、旅の歌人として過ごし、多くのすぐれた歌を遺しました。
「新古今和歌集」には、個人の歌としては一番多い94首が収録されており、自らの歌集に「山家集」があります。
漂泊の旅の様子は、「古今著聞集」「沙石集」などの説話集に記され、西行の足跡は次第に伝説化されるようになりました。

中務集は、その西行が書いたと伝えられる平安中期の女流歌人・中務の私家集(個人の歌を集めた本)です。

女流歌人・中務とは、宇多天皇の第4皇子敦慶親王の女です。
父が中務卿・式部卿であったため、その官名を女房名としました。母は歌人として有名な伊勢です。

中務集の特徴は?

中務集は、上代様を甦らせた気品あふれる名跡です。
※上代様
小野道風藤原佐理藤原行成らに代表される平安中期に完成した和様の書風。

中務集は、西行60歳頃の書と考えられています。
端正な字、息が長く美しい連綿は、上代様に見られたものです。
この頃は、すでに上代様は流行から外れ、古風と考えられていたようですが、西行はそのような時代の流れに流されず、上代様の美を見事に表現してみせたのです。

格調の高いかなの表現
同時代では類を見ない端正さです。

1首3行にほぼ統一された形式は、和歌を読ませることに主眼が置かれたのではないでしょうか。
とはいえ、文字の形の格調の高さ、端正さは、この時代でも飛びぬけて優れたもので、息の長い連綿も安定感があります。
11世紀の仮名文字を規範とし、テンポが速くリズム感に富み、よく歯切れのよい筆致で書かれています。
たいへん伸びやかで、切れ味の鋭い線質も特徴です。

大和綴(やまととじ)の冊子本
本紙:楮紙
表紙裂地:紺地に龍牡丹唐草文緞子

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