白氏詩巻の特徴は?
白氏詩巻の筆者は?
藤原行成が47歳のときの書です。
藤原行成は、小野道風・藤原佐理と並ぶ「三蹟」の1人です。
名門藤原家に生まれましたが、早くに父や祖父を亡くしたため、若い頃は出世できず、一時は出家を志したほど不遇の日々を過ごします。
しかし、30歳で参議に任命されて以降、役人としても頭角をあらわし、晩年には正二位按察使権大納言まで昇進することになります。
藤原行成の書の特徴は、線質が繊細で、上品で穏やかである点です。
作品は洗練されていて、優美です。
感情のまま走るというところがなく、形を崩さず理智的に整っています。
行成は端正で温雅な小野道風の書を好んでいました。
藤原行成の書は、小野道風の継承といわれることがありますが、小野道風のような重々しさはありません。そして、藤原佐理のような奔放性もありません。
小野道風と藤原佐理の特徴を巧みに取り入れ、新様を書きだしています。
小野道風と藤原佐理に見られるような筆管の角度の変化がなく、固定した角度の運筆であるため、藤原行成の書は一般的に真似しやすかったと思われます。
藤原行成の書が人気を得て、長く愛されたのは、一般に受け入れられやすい要素にもあったのではないでしょうか。
藤原行成の自筆と言われている書
関戸家旧蔵消息・高松宮家旧蔵白楽天詩巻・本能寺切・後嵯峨院本白楽天詩巻細字の白詩文集・定文草案など
※このうち、草名のある消息、定信が行成自筆と鑑定している高松宮家旧蔵白楽天詩巻が確実な自筆と考えられていますが、その他の書も書風の点からかなり信憑性が高いと言われています。
仮名については、自筆と断定されているものはありません。
白氏詩巻はどんな古筆?
唐の白居易(白楽天)の詩文集「白氏文集」
料紙は9張、茶・薄紫・薄茶・白などの美しい刷毛染めの染紙を交互に継いでいます。
白氏詩巻の特徴は?
白氏詩巻は、全長約8尺で、行数68の長巻。文字も大きい。
現存している藤原行成の代表作といえます。
白氏詩巻の特徴は、線の太細の変化に無理が無く、しなやかで格調の高い和洋書です。
丸みを帯び、ふくよかな印象の強い字形は、和洋書の典型的な形です。
字形・線質に関して、「白氏詩巻」は、優美に洗練された和洋書の1つの完成型の域に達しています。
1字の中では、自由自在に筆が動いていますが、行の乱れもなく、端正にきちっとおさまった姿には、出世して官位を得ても決して謙虚さを失わなかったという行成の人柄を垣間見ることが出来ます。
筆管の角度を右に傾けさせた側筆で、静かに穏やかに運んでいます。
白氏詩巻の臨書 書き方のヒント
- 温和な中にも強さを秘めた筆線
- 気品のある整った字形
- 端麗優美な書風であることを意識して書きます