孔子廟堂碑の特徴や臨書のポイント
楷書のカタチは、初唐に確立されましたが、その担い手が、欧陽詢と虞世南です。
その虞世南の楷書を代表するのが孔子廟堂碑です。
(虞世南の書として信用できる唯一のものが孔子廟堂碑です。)
以下で、孔子廟堂碑について特徴や詳しい内容を解説させていただきます。
孔子廟堂碑の読み方
孔子廟堂碑は、「こうしびょうどうひ」と読みます。
孔子廟堂碑の名前の由来/意味
孔子廟堂碑とは、唐太宗が儒教を保護し、長安の国子監内の孔子廟を修復したのを機に記念に建立されたものです。
孔子廟堂碑 特徴/臨書のポイント
- 向勢(転折の丸み)
- 内剛外柔
- 穏やかな用筆
- 九成宮醴泉銘との比較
孔子廟堂碑は、九成宮醴泉銘・雁塔聖教序とならんで唐代の最高傑作です。
孔子廟堂碑の特徴としては、おだやかで品があります。
虞世南の書は、たいへん品格が高く、伸び伸びとしていて、静かで、嫌味やクセがありません。
1字ごと誠実に心をこめて書いたという印象です。
これは、この碑が勅命を受けて書いたものであり、内容が孔子の徳をたたえた文であることが大きな理由ですが、同時に虞世南の温厚で謙虚な人柄が素直に表現されています。
・孔子廟堂碑の運筆は、静かでゆるやかです。
遠くから勢いを誘って、筆は素直にやわらかく紙に接します。筆が紙に触れると線の中程で少し抑える程度で楽々と筆を運びます。
画の終わりも特に力を入れず、そのまま遠くへ筆を放すつもりで次の画に移ります。これを書道で遠勢といいます。
この遠勢は、孔子廟堂碑を書く上で大切なポイントです。
・孔子廟堂碑の字形は、紡錘形(円柱形の両端のとがった形)で点や接筆は多く離す。
縦の2画が並ぶとき相対する画は、向勢で外側にふくらむように形づくられています。
その結果、字形は欧陽詢のプリズム型(三角柱のような形)に対し、多く紡錘形です。
横画も互いに外側にふくらむように書かれています。点や線で組み立てるときは、互いにあまりくっつきあわないように少し離して、ぱらりとした感じに形づくります。
・全体をまとめる画を長く伸ばす
文字には全体をまとめる画があります。文字によってどの位置の画かは異なりますが、その文字を強調し、他の画を控えめに書きます。そうすることで、空間に余白がうまれ、文字のバランスが調和し、安定して美しくみえます。
・偏(へん)と旁(つくり)の間を広くとる
文字を構成するパーツの間を広くゆとりをもたせます。
おだやかでゆとりのある字形は、こうした点からつくられます。
・波法(はほう 波のようにうねって見える線のこと)は、のびやか
右払いの斜線、欧陽詢や褚遂良の場合、右下の太くなるところで一度筆を止めて、そこからはね出すように書きますが、虞世南の場合、はじめから自然に太くなり、最も太くなったところで筆の穂先がやや下側に、そこから筆圧をゆるめて抜くとった自然な書き方です。
・点画にふくらみがある
点画のふくらみは、ごく自然にゆるやかに変化します。
ハネは短く収めて、決して長くハネません。
外側は穏やかで柔らかく、内側はしっかり強い印象は、こうした手法からくる場合が多いようです。
・文字の形は疎密の変化を
偏とつくりなど字のパーツごとの疎密に注意を向けます。
文字の中心から左側が密で、右側が疎にして全体のバランスが保たれていることが多いです。
運筆のリズムにも関係します。
・文字の下部を右へよせる
孔子廟堂碑の場合、下部を右へよせることで、安定を保っています。
・点画に変化をだす
孔子廟堂碑は、概ね向勢が多いですが、向勢・背勢・直勢を使い分けて作品に変化をもたせます。
孔子廟堂碑の全文
孔子廟堂之碑
太子中舍人行著作郎
臣虞世南奉
敕撰並書。
司徒・并州牧・太子左千
牛率・兼撿校・安北大都護・相王旦・書碑額。微臣属書東觀。
預聞前史。若乃知幾其神。惟睿作聖。玄妙之境。希夷不測。
然則三五迭興。典墳斯著。神功聖跡。可得言焉。自肇立書契。初分爻象。委裘垂拱之風。革夏翦商之業。雖復質文殊致。進讓罕同。靡不拜洛觀河。膺符受命。名居域中之大。手握天下之圖。象雷電以立威刑。法陽春而流惠澤。然後化漸八方。令行四海。未有偃息鄉党。栖遲洙泗。不預帝王之錄。遠跡胥史之儔。而德侔覆載。明兼日月。道藝微而復顯。禮樂弛而更張。窮理盡性。光前絕後。垂範百王。遺風於萬代。猗歟偉歟。若斯之盛者也。夫子膺五緯之精。踵千年之聖。固天縱以挺質。稟生德而降靈。載誕空桑。自摽河海之狀。纔勝逢掖。克秀堯禹之姿。知微知章。可久可大。為而不宰。合天道於無言。感而遂通。顯至仁於藏用。祖述先聖。憲章往哲。夫其道也。固以孕育陶均。包含造化。豈直席卷八代。併吞九丘而已哉。雖亞聖鄰幾之智。仰之而弥遠。亡吳霸越之辯。談之而不及。于時天歴浸微。地維將絕。周室大壞。魯道日衰。永歎時囏。實思濡足。遂廼降跡中都。俯臨司寇。道超三代。止乎季孟之閒。羞論五伯。終從大夫之後。固知栖遑弗已。志在於求仁。危遜從時。義存於拯溺。方且重反淳風。一匡末運。是以載贄以適諸侯。懷珤而遊列國。玄覽不極。應物如響。辯飛龜於石函。驗集隼於金櫝。觸舟既曉。專車能對。識罔象之在川。明商羊之興雨。知來藏往。一以貫之。但否泰有期。達人所以知命。卷舒惟道。明哲所以周身。牖裏幽憂。方顯姬文之德。夏台羈紲。弗累商王之武。陳蔡為幸。斯之謂歟。於是自衛反魯。刪書定樂。贊易道以測精微。修春秋以正褒貶。故能使紫微降光。丹書表瑞。濟濟焉。洋洋焉。充宇宙而洽幽明。動風雲而潤江海。斯皆紀乎竹素。懸諸日月。既而仁獸非時。鳴鳥弗至。哲人雲逝。峻嶽已隤。尚使泗水卻流。波瀾不息。魯堂餘響。絲竹猶傳。非夫體道窮神。至靈知化。其執能與於此乎。自時厥後。遺芳無絕。法被區中。道濟天下。反金冊斯誤。玉弩載驚。孔教已焚。秦宗亦墜。漢之元始。永言前烈。褒成爰建。用光祀典。魏之黃初。式遵古訓。宗聖疏爵。允緝舊章。金行水惪。亦存斯義。而晦明匪一。屯亨遞有。筐筥蘋蘩。與時升降。靈宇虛廟。隨道廢興。精炎失御。蜂飛蝟起。羽檄交馳。經籍道息。屋壁無藏書之所。階基絕函丈之容。五禮六樂。翦焉煨燼。重弘至教。允属聖期。大唐運膺九五。基超七百。赫矣王猷。蒸哉景命。鴻名盛烈。無得稱焉。皇帝欽明睿哲。參天兩地。廼聖廼神。允文允武。經綸云始,時維龍戰。爰整戎衣。用扶興業。神謀不測。妙筭無遺。弘濟艱難。平壹區宇。納蒼生於仁壽,致君道於堯舜。職兼三相。位揔六戎。玄珪乘石之尊。朱戶渠門之錫。禮優往代。事踰恒典。於是在三睠命。吹萬歸仁。克隆帝道。丕承鴻業。明玉鏡以式九圍。席蘿圖而禦六辯。夤奉上玄。肅恭清廟。宵衣昊食。視膳之禮無方。一日萬機。問安之誠弥篤。孝治要道。於斯為大。故能使地平天成。風淳俗厚。日月所照。無思不服。憬彼獯戎。為患自古。周道再興。僅得中筭。漢圖方遠。纔聞下冊。徒勤六月之戰。侵軼無懕。空盡貳師之兵。憑淩滋甚。皇威所被。犁興睠納。空山盡漠。歸命闕廷。充仞槁街。填委外廏。開闢已來。未之有也。靈臺偃伯。玉關虛候。江海無波。烽燧息警。非煙浮漢。榮光莫河。楛矢東歸。白環西入。猶且兢懷夕惕。馭朽納隍。卑宮菲食。輕徭薄賦。斵琱反樸。抵璧藏金。革舄垂風。綈衣表化。曆選列辟。旁求遂古。克已思治。曾何等級。於是眇屬聖謨。凝心大道。以為括羽成器。必在膠雍。道德潤身。皆資學校。矧廼入神妙義。析理微言。厲以四科。明其七教。懿德高風。垂袞斯遠。而棟宇弗修。宗祧莫嗣。用紆聽覽。爰發絲綸。武德九年十二月二十九日。有詔立隋故紹聖侯孔嗣哲子德倫為褒聖侯。乃命經營。惟新舊址。萬雉斯建。百堵皆興。揆日占星。式規大壯。鳳甍鶱其特起。龍桷儼以臨空。霞入綺寮。日暉丹檻。窅窅崇邃。悠悠虛白。模形寫狀。妙絕人功。象設已陳。肅焉如在。握文履度。複見儀形。鳳跱龍蹲。猶臨咫尺。唲尓微笑。若聽武城之絃。怡然動色。似簫韶之響。襜襜盛服。既覩仲由。侃侃禮容。仍觀衛賜。不疾而速。神其何遠。至於仲春令序。時和景淑。皎絜璧池。圓流若鏡。青䓗槐市。揔翠成帷。清滌玄酒。致敬於茲日。合舞釋菜。無絕於終古。皇上以幾覽餘暇。遍該群籍。乃製金鏡述一篇。永垂鑒戒。極聖人之用心。弘大訓之微旨。妙道天文,煥乎畢備。副君膺上嗣之尊。體元良之德。降情儒術。遊心經藝。楚詩盛於六義。沛易明於九師。多士伏膺。名儒接武。四海之內。靡然成俗。懷經鼓篋。攝齊衣趨奧。並鏡雲披。俱餐泉湧。素絲既染。白玉已彫。資覆簣以成山。導涓流而為海。大矣哉。然後知達學之為貴。而宏道之由人也。國子祭酒楊師道等。偃玄風於聖世。聞至道於先師。仰彼高山。願宣盛德。昔者楚國先賢。尚傳風範。荊州文學。猶鎸哥頌。況帝京赤縣之中。天街黃道之側。聿興壯觀。用崇明祀。宣文教於六學。闡皇風於千載。安可不贊述徽猷。被之雕篆。乃抗表陳奏。請勒貞碑。爰命庸虛。式揚茂實。敢陳舞詠。廼作銘云。景緯垂象。川岳成形。挺生聖德。寔稟英靈。神凝氣秀。月角洙庭。探賾索隱。窮幾洞冥。述作爰備。丘墳咸紀。表正十倫。章明四始。系纘羲易。書因魯史。懿此素王。邈焉高軌。三川削弱。六國從衡。鶉首兵利。龍文鼎輕。天垂伏龞。海躍長鯨。解黻去佩。書燼儒坑。纂堯中葉。追尊大聖。乃建褒成。膺茲顯命。當塗創業。亦崇師敬。胙土錫圭。禮容斯盛。有晉崩離。維傾柱折。禮亡學廢。風頹雅缺。戎夏交馳。星分地裂。蘋藻莫奠。山河已絕。隋風不競。龜玉淪亡。樽俎弗習。干戈載揚。露霑闕裏。麥秀鄒鄉。修文繼絕。期之會昌。大唐撫運。率繇王道。赫赫玄功。茫茫天造。奄有神器。光臨大寶。比蹤連陸。追風炎昊。於鑠元后。膺圖撥亂。天地合德。人神攸贊。麟鳳為寶。光華在旦。繼聖崇儒。載修輪奐。義堂弘敞。經肆紆縈。重欒霧宿。洞戶風清。雲開春牖。日隱南榮。鏘耾鐘律。蠲絜齍明。容範既備。德音無斁。肅肅升堂。兟兟讓席。獵纓訪道。橫經請益。帝德儒風。永宣金石。
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