高貞碑の特徴など
楷書を習いはじめる方は、概ね初唐の欧陽詢・虞世南・褚遂良を選び、その後六朝楷書(中国の南北朝時代に北朝で発達した独自の楷書体)に向かうと思います。特に北魏は学ぶべき楷書がたくさんあります。
その中でも高貞碑は、破損が少なく、北魏楷書と初唐楷書の特徴を兼ね備えた学びやすい古典です。
髙貞碑の作者は?
作者は不明です。
高貞碑の意味
高貞碑(こうていひ)523年の刻。24行、行ごとに46行の楷書です。
額には篆書で4行12字「魏故営州刺史懿侯高君之碑」と記されています。
山東省文物考古研究所の現存します。
高貞碑の内容は、高貞という人の系譜を語った後、生前の業績や建碑の事情を記しています。
高貞碑の特徴
六朝楷書(中国の南北朝時代に北朝で発達した独自の楷書体)で、特に北魏の楷書は名品揃いで、高貞碑の他に、石門銘、張猛龍碑、龍門造像記、墓誌銘などがあります。
高貞碑は、北魏の代表的な名品です。
書風は方筆と呼ばれる角ばった運筆法で、強さの中に技巧がすぐれて理知的です。
整った方形、力強く骨太でのびのびとしていながら、まとまりがあります。
字形は、角張り、線は突っ張っています。
運筆は、単純で直線的にさらっと運ばれています。
書法は、偏と旁に高低をつけ、合理的に組み合わせています。
点画に統一性があり、構築的です。
中鋒を使って、充実感をだしています
長い横画を使ってバランスをとりつつ、やや湾曲させています。
異体字・仮借字が多くあります。
※異体字ーどちらも同じ意味の漢字ではあるものの、漢字の形が異なっている字。
例)「国」と「國」
※仮借字ーある漢字を同音の別の意味に用いること。
例) 元来「のこぎり」を表した「我」を一人称代名詞に用いる
髙貞碑を最もよく臨書したのは、楊守敬の師である潘存(はんそん)といわれています。
高貞碑 臨書の書き方
筆は、初心者の方は兼ごう筆をおすすめします。適度な硬さで扱いやすいからです。
剛毛でも柔毛どちらでもよいが、剛毛を使用すれば、厳しい線を出し易いです。
慣れてきたら、微妙な運筆の変化が出しやすい柔らかい羊毛筆に挑戦してはいかがでしょうか?
側筆ぎみに構えます。
墨は特に指定するものはありません。唐墨でも和墨でもよく、普段使用されているものでよいです。但し、青墨は高貞碑には合わない気がいたします。
北魏独特の方形な形で、字形の上部が大きく、偏より旁が下がります。
横画は長めで、左への拡張が顕著で、横画・縦画の太さは一定です。
左払いは末端近くまで太く、あらゆる点画を緊密に配し、力強さを表現しています。
偏と旁の組み合わせも密接です。
横画
誇張なく、うねりの少ないさらりとした書き方
起筆は概ね50度の角度、運筆は中鋒で、平勢に太細の変化をつけません。
収筆は起筆と同じ方向で筆を止め、軽く止めてから元に戻します。収筆は抜いた感じで角を付けていません。
縦画
横画と同様、すっきりとした書法で、歪みのない字形をつくります。
紙に食い込むようにおさえ、いったん軽く筆圧を加えてから、少し戻してそのまま中鋒で縦に引きます。
ハネ
下端で筆を止め、起筆と同じ調子で筆を少しおこして、筆を押し出すようにして筆圧を加えながらはねます。 浮いた線にしないことです。
左はらい
1.隷書のように筆圧をかけながら、押さえるように引く
2.初唐の古典のような鋭利で紙を切るように
右はらい
1.北魏的なガッシリしたもの。左はらいに比べて特に短い
2.同じく初唐の古典のような鋭利で紙を切るように
偏と旁
高貞碑は、偏と旁が入り込んでいる間の取り方に特徴があります。筆勢は、平正で力強い横画が高い緊密感と安定性を生んでいます。
筆法は起筆の打ち込みが強く、約50度に統一し、収筆は多く抜き去ります。波法とハネが長いのが特徴です。
楷書は起筆が命なので、軽く突いて戻してからねばり強く送筆します。
転折では、入筆角度を原帖そのままに、一旦上へあげて打ち直してから下へ降ろす感じで書きますが、龍門造像記ほど厳しくはありません。
左にはねる場合は、上からきた筆をそのまま左へ押し出してからはねます。
右はねもうち直して右上へおしはらいます。
筆の構えは少し側筆にして、筆圧はかなり強くかけ、終わりまで緩めずおしきる。そのため、線にはあまり抑揚はでません。
高貞碑は、力強く、北魏楷書の完成された姿と言われます。
全体像をしっかりとらえて、起筆と転折の入筆角度を原状そっくりに再生することが臨書するうえで大切です。
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