金石文(金文・石文)とは?
金文には、象形的なものがあったり、絵画的なものがあったりします。
楷書・行書・草書のように日常的に目にすることがないので、専門に学ばないと読めないし、意味も分かりません。
でも、その非日常的なところに、金文の魅力がつまっているような気がいたします。
金文を学ぶ入口として、以下の内容を参考にしていただけましたら幸いです。
金石文(金文・石文)とは?
金石文(きんせきぶん)とは、およそ3200年前に誕生し、金属や石に刻まれた文字のことです。
この場合の「金」とは、青銅の意味です。
金文
金文(きんぶん)は、時系列的には、甲骨文字の後にあたります。中国殷周の青銅器時代に多くつくられ、これに銘文が
鋳込まれたり、刻まれました。
書体の完成の順では、篆書・隷書・行書・草書・楷書ですが、篆書をさらに分解すると、次の5つになります。
甲骨文字・金文・籀文(ちゅうぶん)・古文・小篆
金文も篆書体の1つということです。
石文
石文(せきぶん)に関して、漢代から金文にかわって石に文字を刻することが多くなります。
なお石などに刻まれた文章は石文と呼ばれ、一緒にして金石文と呼ばれます。
先秦の石鼓文・秦代の秦山刻石、漢代以降は多くの刻石がされるようになります。
碑・摩崖・石経(せっけい)・石闕(せっけつ)・画像・墓誌銘・造像記・塔銘・経幢・題詩・題名・橋桂・井欄・刻経など多方面です。
金・石以外でも、木刻・玉刻・竹刻が金石文に含まれます。
呉昌碩が石鼓文の臨書に熱心で、その影響で当時の日本でも徐々に金文の実作がされるようになりました。
これら金文・石文を研究することを金石学といいます。
金文の時代別特徴
殷末西周初期 金文
この時期の金文の特徴は、起筆・終筆が細くなるところで、躍動感があり、たくましい書風のものが多く存在します。
殷の鋳造技術を引き継いだ当初の金文、氏族や部族を表す「図象徽号」から、やや長文化した銘文が見られるようになります。
大盂鼎(だいうてい)殷周革命に言及した銘文
縦横の文字の配列が整然としています。各字の体勢・結構はやや縦長で形は安定しています。
召卣(しょうゆう)師遽方彝(しきょほうい)も大盂鼎に似た書風です。
大盂鼎(だいうてい)
召卣(しょうゆう)
師遽方彝(しきょほうい)
西周中期・晩期 金文
西周の中晩期は、金文体の最盛期の時期にあたります。
銘文の字形はさらに整って美しくなり、字間・行間も整うようになります。
大克鼎(だいこくてい)文字を一字づつ枠線の中に収めるように製作されるようになります
毛公鼎(もうこうてい)32行500字を最大とするところまで発達します。
散氏盤(さんしばん)諸侯同士の領地争いを解決した証文を記載した銘文
文字を整える意識はさらに洗練され、描画的だった肉厚の点画も均一の太さを持つ線で書かれるようになり、文字の大きさも画数に関係なく一定の面積に収まるようになります。
金文の成文は、これら王からの褒賞や領地範囲の明文化を通して、王の仲介があったことを物語るものとなっています。
殷末西周初期
大盂鼎(だいうてい)
召卣(しょうゆう)
師遽方彝(しきょほうい)
西周後期ー晩期
毛公鼎(もうこうてい)
虢季子白盤(かくきしはくばん)
西周晩期
散氏盤(さんしばん)
秦公皀殳(しんこうき)
東周 金文
周王室が衰えて勢いが弱まり、外の圧力によって都を西安から洛陽に移した時代です。
春秋戦国時代とも呼ばれ、始皇帝の統一まで、群雄割拠の時代になります。
金文の内容は、配下の将軍たちの戦功を記録する成文になりました。
さらに国ごとに字義や字形が様々に変化しました。
その他、いままで出来なかった銘文の掘り込みが鉄器の開発によって可能になります。
器の内側に鋳込まれていた金文が、外側に刻まれることが可能になりました。
この技法の変化により、筆記体にほぼ等しい銘が生まれたり、陳や中山で流行した「虫鳥体」と呼ばれる装飾性の高い細身の銘が生まれたりしました。
金文体の書き方
自分の好きな言葉を金文で書く場合、青銅器の銘文にその文字がなければ、時期や場所の異なる文字が混じっていないか注意しなければいけません。
そのため、金文の書風の変遷を知っておく必要があります。
金文はおおむね蔵鋒ですが、年代によっては、先が尖っていることがありますので、代表的な各時代の金文を臨書して、時代別の特色や様式の特色など基礎的なところを吸収してください。
本来篆書には墨のにじみ・渇筆、線の太細はほとんどありませんが、基礎的な部分をおさえた上で、自由な発想で書いてみてはいかがでしょうか。
金文横画の書き方
篆書体の横画は、基本的には水平な線です。
横画を書くときは、肩を中心として(肩を正面に)横画を引くと、水平な線が書きやすくなります。
体を中心として書くと、水平な線が書きにくいためです。
金文の場合、起筆は基本的に蔵鋒(逆方向に筆を入れ、筆を戻します)です。
逆に入れた筆を戻すときに、いったん筆をとめることがポイントです。止めることで、筆が十分に返り、終筆の形も軽くキレイにでます。
運筆の速さは、筆の弾力を失わないようにゆっくりと書きます。
金文を臨書する際は、選んだ字が鋳造されたものか、タガネで刻られたものかを確認し、それによって表現する線の質を変えます。時代背景を理解した上で、金文の臨書をしましょう。
金文縦画の書き方
縦画も起筆は蔵鋒ですが、縦画の蔵鋒には2種類あります。
極端に言い表しますと、「時計回り的に蔵鋒で書く」「反時計回り的に蔵鋒で書く」です。
この2種類を使い分けることで、終筆の形がかわります。
この違いを分かっていると、金文の縦画を見たときに、どちらのパターンで起筆したのか分かります。
金文肥筆の書き方
殷末から周の初期にかけて、肥筆をもつ字が多くみられます。
肥筆とは、見た目が絵的で、始めと終わりが鋭く尖り、中ほどは太く肥えた感じの文字です。
一見どう書いたらよいか分からないですが、一筆で書ききれないようなものは、書き加えて塗るようにして書けばよいです。すべて塗りつぶさずに、よい感じに残しておくのもポイントです。
金文の筆順
金文には筆順はありませんが、左上から右下に書くのが自然です。
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