古隷とは?
古隷とは、一般的に楷書・行書・草書・篆書・隷書のうち、隷書の一種と考えられています。
その中でも漢代の隷書の中で波磔のあるものを八分(はっぷん)、無いものを古隷としているようです。
波磔とは、隷書で波を打つような右払い。
但し、書体は、長い時間をかけて多くの人によって書き継がれていくうちに、徐々に変化したものです。それを後世に文字の特徴をもとにおおまかに分類しています。
ですから、時代ごと、文字ごとに明確にカテゴリー分けするのは困難です。
古隷に関しても、以下のように定義することがあり、その定義は一定ではありません。
- 今隷の対比としての言葉
- 八分の対比としての言葉
- 古い隷書体の意味として
- 秦代の隷書
- 秦・漢代の隷書
古隷的な作品
古隷的な主な名品
「開通褒斜道刻石(かいつうほうやどうこくせき)」
古隷の最高傑作。行間のとり方・字の大きさが自在。
「五鳳二年刻石(ごほうにねんこくせき)」
前漢の隷書の特徴。縦画には横画にはない抑揚がみられる。
「群臣上寿刻石(ぐんしんじょうしゅうこくせき)」
古隷、漢代隷書刻石で最古のもの。
「萊子侯刻石(らいしこうこくせき)」
界線が刻されている。荒々しいが、毛筆らしい書風。古隷作品。
「三老諱字忌日記(さんろうきじきじつき)」
古隷的で整った書風。
「楊淮表記(ようわいひょうき)」
顕著な波磔はなく、古隷的な書。岩面の粗さ、伸びやかで朴訥とした筆勢。
「馬王堆帛書(まおうたいはくしょ)」
甲本・乙本があり、甲本は隷書で字形は方形。乙本は古隷で横長の方形。
「武威医簡(ぶいいかん)」
木片に書かれた文書。波磔がみえる。転折に筆の返しがみられ後漢の隷書に近い書法。
「石門頌(せきもんしょう)」
八分隷の特徴の波磔がありつつ、古隷的。
「処士残石(しょしざんせき)」
書風は楊淮表記に近い。八分隷のような波磔やのびやかな点画なし。字形は正方形で古隷的。
上記のものにも波磔が含まれるものがあるので、古隷の分類は極めて曖昧なものになります。
清代に金石学が盛んになるとともに古隷を書作品に応用する書家が現れますが、多くは波磔が鮮やかな八分的な作品が多かったようです。
日本では明治時代以降に古隷的な作品を残す書家が出始めます。
中林梧竹や前田黙鳳などです。
特に中林梧竹は、たくさんの臨書や創作を残しています。
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