風信帖の内容・特徴など
風信帖は、空海の中でも特に整っており、上品で美しい書蹟です。
現存する3通は、それぞれ趣きが異なりますが、空海の筆によっていきいきと表現されています。
風信帖の意味/内容
風信帖(ふうしんじょう)は、空海が最澄にあてた手紙3通を1巻の巻物として保存されたものです。料紙は,楮紙を使用しています。
風信帖の内容は、空海が最澄と何通もの手紙をやりとりしたものです。
風信帖の名前の由来は、その1通目の書き出しが「風信雲書」から始まるので「風信帖」と呼ばれています。
書体は行草体で、15行からなっています。
2通目の「忽披帖(こつひじょう)」は、「忽披枉書」の句で始まるのでこの名になっています。
書体は行草体の8行。書風は、1通目から一転して覇気に満ちた力強い書きぶりで、精気があり、また情緒もあります。
3通目の「忽恵帖(こつけいじょう)」は、「忽恵書礼」の句で始まるのでこの名になっています。書風は、流麗な草書体で、13行からなっています。
上記のように、風信帖は、3通それぞれ書き方と書風が少しずつ違い、同じではありません。
風信帖の特徴
字形は縦長で、右上がりになっています。
書き出しの「風」もそうで、2画目の横画は、少し右に上がって、肩を張りますが、いかめしさはなく、ゆったりと落ち着いた気構えを感じます。筆は深く沈み、線は厚く、筆力は終筆まで持続します。
運筆は、巧みで熟達しており、深みを感じさせます。
書風は、根底に晋唐風を感じますが、晋唐の模倣ではなく、空海独自の個性が表現されています。王羲之の「蘭亭序」に影響を受けた文字が見られます。格調が高く、書の変化が見られる所です。空海の心の在りようを絶妙な筆致で、含蓄深く反映されています。
風信帖の臨書 書き方のヒント
- 集王聖教序と比較しながら臨書する
- 三通各書簡の比較
- 最澄の書(久隔帖)と比較しながら臨書する
- 筆順と筆脈の確認
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風信帖 全文
風信雲書自天翔臨
披之閲之如掲雲霧兼
恵止観妙門頂戴供養
不知攸厝已冷伏惟
法體何如空推常擬
隨命躋攀彼嶺限以少
願不能東西今思与我金蘭
及室山集會一處量商仏
法大事因縁共建法幢報
仏恩徳望不憚煩勞蹔
降赴此院此所々望々忩々
不具 釋空状上
九月十一日
東嶺金蘭 法前
謹空忽披枉書已銷陶尓
御香兩裹及左衛士
督尊書状並謹領
訖迫以法縁暫闕談
披過此法期披雲
因還信奉此不具
釋遍照状上
九月十三日忽恵書札深以慰情香
等以三日來也從三日起
首至九日一期可終
十日拂晨將參入願
留意相待是所望
山城石川兩大徳深
渇仰望申意也
仁王經等備講師將
去未還後日親將去
奉呈莫々責々也因
還人不具沙門遍照状上
九月五日
止観座主 法前
謹空
風信帖 釈文
風信雲書、天より翔臨(しやうりん)す。
之を披(ひら)き之を閲(けみ)するに、雲霧を掲(かか)ぐるが如し。
兼ねて止観の妙門を恵まる。頂戴供養し、厝(お)く攸(ところ)を知らず。
已(すで)に冷(ひやや)かなり。
伏して惟(おもん)みるに、法體(ほつたい)何如(いか)に。
空推(うつ)ること常なり。
命(めい)に隨ひ彼(か)の嶺(みね)に躋攀(せいはん)せんと擬(はか)るも、
限るに少願を以てし、東西すること能はず。
今、我が金蘭及び室山と一處に集會(しふゑ)し、仏法の大事因縁を商量し、共に法幢(ほふどう)を建てて仏の恩徳に報いんと思ふ。
望むらくは、煩勞を憚らず、蹔(しばら)く此の院に降赴(かうふ)せよ。
此れ望む所、望む所。
忩々(そうそう)不具 釋空 状(しる)して上(たてまつ)る。
忽ちに枉書(わうしよ)を披(ひら)き、已(はなは)だ陶尓(うれひ)を銷(け)す。
御香兩裹(りやうくわ)及び左衛士(さゑじ)の督(かみ)の尊(みこと)書状、並びに謹んで領し訖(をは)る。
迫(せま)るに法縁を以てし、暫く談披(だんぴ)を闕(か)く。此の法(ほふ)、期を過ぐれば披雲(ひうん)せん。還信(くわんしん)に因(よ)つて此(これ)を奉ず。
不具 釋遍照 状(しる)して上(たてまつ)る。
忽ちに書札(しよさつ)を恵まれ、深く以て情(こころ)を慰む。
香等は三日を以て來(きた)る也。三日より起首(はじめ)て、九日に至りて一期終るべし。十日の拂晨(ふつしん)に參入せんとす。
願はくは留意して相(あひ)待たれんことを。是れ望む所なり。
山城 ・石川の兩大徳、深く渇仰(かつがう)して意(こころ)を申(の)べんことを望む也。
仁王經等は備講師(びかうし)將(も)ち去(ゆ)きて未だ還らず。
後日、親(みづか)ら將(も)ち去(ゆ)きて奉呈せん。
責むること莫(なか)れ、責むること莫(なか)れ。
還人(くわんじん)に因(よ)る。不具 沙門遍照 状(しる)して上(たてまつ)る。
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