乙瑛碑の隷書 後漢の書
乙瑛碑とは
乙瑛碑(いつえいひ)とは、永興元年(153)後漢時代に建てられた碑で、 漢代隷書の代表的な碑です。
「史晨碑(ししんひ)」「礼器碑(れいきひ)」とともに孔廟三碑(こうびょうさんぴ)とよばれています。
文は3つに分かれており、その後に讃を加えています。
第一は、乙瑛の請願に対する許可、第二は魯相への通達、第三はこの通達により試験を実施し、孔和を選出したこと。
讃には、守廟の吏を常置することに功績のあった前相の乙瑛、守廟吏の官舎をつくったホウジョウ・孔子19世の孫の麟の3名をあげ、功績を表彰しています。
内容は、魯国の相であった乙瑛の申請によって、魯の孔子廟に漢代の書記を置いて廟を守らせることになり、その関係者の功績を記しています。
乙瑛碑が建てられた後、中央から役人が見える度に、その土産として乙瑛碑の拓本が採られたため、碑に墨が移り、今では文字の判別が困難な程真っ黒になっています。
乙瑛碑の特徴
乙瑛碑は、謹厳ななかにもゆったりとした結構で、字形は整いそろっています。
この碑は、八分(はっぷん)という左右に開いた形の波法の美しい書体で書かれています。
筆力は強く勢いがあり、波磔にも力強さを感じます。漢代の隷書の中でも優れた碑である。
この用筆に近いものは、「西嶽華山廟碑」(せいがくかざんびょうひ)があります。
乙瑛碑 臨書書き方のヒント
乙瑛碑の臨書のポイント
- 蔵鋒
- 波磔の用筆法
字形は、方形またはやや縦長の四角形の形によく収まって、整然としています。
重厚で左右の均衡がよく保たれ、結構も等間隔に美しく整っています。
線は、少し太めで力強く古雅で品がよい古典です。
横画などの波法は、短く太く力強いが派手さはありません。
横画がやや曲線気味なのに対し、縦画は反り返った背勢で書かれ、隷書を特徴ずけるものに波勢があり、波磔は「一字一波」であるため、その独特な華やかさが強調されます。
字形は原則として扁平に書きます。
横画は水平、縦画は垂直に、点画は等間隔です。
穂先を逆方向から入れ、点画の中心を通します。
転折は二画に分けて書きます。
筆は鋒先がよく利く、中筆の兼毫筆が書き易いです。
→中筆 兼毫筆 中楷乗
隷書は形の上では扁平、筆先は中鋒という、筆の力が線の中心を通る書き方を徹底します。
1. 横画の書き方
右上から、斜めに軽く切り込み、弾力が生じ、折り返す。全ての筆毛が紙面に食い込むまで、じっくりと待つ。そして右横方向へ水平に送筆する。隷書の強さは逆筆による起筆から生みだされます。
起筆の角度を揃えることも重要です。
※水平だが波打つ感じに送筆する。
2. 収筆
隷書の収筆(最後のとめ)は、楷書のように丁寧に止める必要はありません。1点でまとめあげる楷書よりも、自然体でスッと紙から離れる感じです。
3. 転折
楷書の転折は横画からの連続した筆さばきの中で打ち込み直し、縦画へと一筆で書きますが、隷書の転折は横画と縦画を完全に分けて書く方法が基本です。
縦画は横画の終筆で一度筆を離し、改めて逆筆で入れ転折部を作ります。
4.波磔
隷書の右はらいは、波磔が伴い、右方向への波勢を強調しています。
※右はらいは重みを出し筆管を抜き上げるようにする。
5.左はらい
左はらいはあまり長くせず、左横に向かって筆圧を効かせ、力強く止めたり、巻き返して太めに処理する工夫が必要です。
※楷書のように側筆にならぬよう、筆菅を立てて書くことも重要です。
左軽右重は結法の一つですが、全体のバランスを崩さず書くことも大事です。
6.半紙で臨書する場合、原則文字の上端で揃える。行間はほぼ無いに等しい。
鋒先を紙面にしっかり食い込ませて、じっくりと
雄健で力強く書くことが乙瑛碑臨書の大事なポイントです。
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