良寛の書 字が下手でも構わない
良寛にまつわるエピソード
「字を書くことにコンプレックスがある」
そんな方にシェアさせていただきたいお話しがあります。
良寛さんというお坊さんをご存じですか?
江戸時代を代表する禅僧、詩人、歌人であり書家です。
良寛さんは、幼いころから努力なく字が上手に書けたそうです。
偉いお坊さんが達筆であるということで、一筆頼まれることが多かったのですが、ある日良寛さんは思います。
「なにか虚しい」
書いてもらった人は、口々に賞賛と共に感謝の言葉を伝えて帰ったそうですが、人とのつながりにどこか他人行儀なものを感じていたようです。
そこで良寛さんは普通の人では考えつかない行動を起こします。
字が下手になる練習を始めたのです。
練習の甲斐があって、思うような字が書けるようになった良寛さん。
それからも人に頼まれれば書いてあげるのですが、今までとは相手の反応が大きく変化します。
頼みに来た人たちは、その字を見てこらえきれず吹き出してしまいます。
その場は笑顔に溢れ、親しみをこめたお礼を言われるようになりました。
「な~んだ、偉いお坊さんでも字は下手なんだな」
と安心し、良寛さんに親近感を覚えたのです。
それからはいろんな人が遊びに来たり、説法を聞きに来たりするようになりました。
彼は頼まれれば今まで通り、気軽に応じます。
誰にでも分かるような字であたたかい気持ちを込めて書くのです。
字が下手であっても、相手に対して思いをこめて書くことで、
共感してもらえたり、感動してもらえたりするんですね。
ある日の托鉢中、良寛さんは駆け寄ってきた男の子から手にしていた凧に何か書いてほしいと頼まれます。
彼は筆をとってその子の凧に「天上大風」と書いてあげました。
決してうまいとは言えないけれど、良寛さんのほのぼのとした温かい心を感じられる作品。
ちなみに、そのとき書いた「天上大凧」は彼の字の中で最も知られている名作です。
良寛ってどんな人?
良寛は江戸時代後期の禅僧です。
諸国行脚の後、郷里の越後で村の子供たちを友として脱俗生活を送りました。
書・漢詩・和歌に優れ、多くの遺墨が伝存しています。
良寛の臨書 書き方のヒント
- 清澄な筆線
- 丁寧な運筆
- 漢字と片仮名の調和
現在は臨書を通して書を学ぶことが多いですが、良寛も臨書をよくしていたようです。
知人宛の手紙に、懐素 自叙帖の語があったり、良寛の署名が記された秋萩帖の模刻本も現存しています。
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