書道筆のお手入れについて

筆先が割れてしまう大きな要因としては、洗い方に問題があることが多いです。 おそらく全体的になで洗いをされているのだと思います。 確かに時間をかけてなで洗いをすれば、墨は洗い流せたかに感じられると思います。 しかし、墨は根元の奥に付着しており、完全に取れていません。この洗い漏れの墨が蓄積され、筆先が割れる原因になります。 根元が玉葱型に膨らんでいる筆は要注意です。

筆を洗う際、根元のサイドをつまむようにもみ洗いをしてください。 これを墨が流れ出なくなるまで繰り返します。洗い終わったら、日陰の風通しが良い所で、吊り干ししてください。

書道用具について

一般的にかな用・写経用はのびの良い墨が好まれます。
その為、かな用は粒子の細かい植物性油煙を原料とします。粒子が細かくなればなるほど煤の表面積が大きくなり、それだれ膠の必要量も多くなります。 よって、流れはよくなりますが黒味は弱くなります。
一方、漢字用は黒味を大切にしますので、一般的にはかな用ほど細かい煤は使いません。
また、漢字用を仮名用に使っても問題ありません。 仮名条幅用は漢字・かなの区別はあまりありませんが、素紙・加工紙に合うかどうかと墨色のお好みによります。

固形墨は磨く対象となる硯の特徴により、幅広い粒子径の変化を利用することが出来ます。
濃いときには重厚さを、淡墨のときには立体感を表現します。 一方液体墨は粒子径のそろった原料を使っているのできれいなのですが、濃いときには重厚さに欠け、淡墨においてはやや平面的になります。
ちなみに、固形墨は新墨では水温18℃以下になると急激に粘度が増加し、思うような磨墨液が得られない可能性があります。 よって、冬季に固形墨をお使いになる場合は18℃以上の水を使える環境下でご使用ください。それが難しい環境でのご使用は液体墨をお勧めいたします。

価格は原材料と造る職人さんの技量により大きく変わります。

安価な墨は経験年数の少ない職人さんが作ります。最もコストに影響するのは原料の違いです。 但し、安いからといって品質が悪いとは必ずしも結びつきません。学童用の墨などは、現在1番大量に作られている最もポピュラーな煤を原料としています。
少し根底の赤みは少ないですが、大人の練習用として充分使っていただけます。
一方で、相対的には粒子の細かい根底の赤みが強いものが高価な墨です。また、淡墨における透明感のでる墨は技術的にも難しく高価になります。

松煙墨は、松の木に傷をつけて「松やに」を噴出させ、その部分をそぎ切ります。
その後、小割りにし、山の中に建てた障子小屋で燃やし、障子についた煤をとります。 こうして採る松煙は、燃焼温度にむらがあって大小さまざまな粒子のすすが混在し、複雑な墨色を呈します。 おおむね濃墨では厚みのある艶を感じさせない黒(漆黒)となり、淡墨では青灰色を帯びた墨色になります。

墨が古くなるにしたがって墨色に変化が現れ、一層青味が強くなります。 松煙墨が青墨といわれる理由がここにあります。
墨作りの歴史は松煙の採取にはじまりました。 中国後漢の時代(紀元25~220)長安の近く終南山の松からすすを採り、墨を作ったのがその始まりです。

油煙の材料は、菜種・胡麻・つばき・桐と様々で中でも菜種油が最適とされています。

油煙は油を入れた土器に灯心をともし、蓋についたすすを集めます。土器式採煙法が永く踏襲されてきました。 油煙は松煙に比べてすすの粒子が非常に細かく、均一です。墨の色は艶と深みのある純黒で、硯あたりも滑らかです。

墨のすり口を見ると、強い光沢があり、良い油煙墨ほどこの光沢が強くなります。 油の種類によってできるすすの品質、墨の色は微妙に違います。 菜種油煙は赤茶を帯びた黒、胡麻油煙は赤みを帯びた重厚な黒、椿油煙は紫を帯びた黒です。
また、油を焚くときの条件、灯芯の太さ、炎の大小によって墨の色がかわります。 すすの粒子が細かければ細かいほどよく、最微粒(80ナノ=80/100万ミリ)紫味、次第に大きくなるにつれ、赤味、茶味、青灰味、青味と変化します。

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